2024年6月22日 K2インターナショナルグループ代表の金森克雄が講演を行いました。
こちらは内容を書き起こしたものになります。
【ヨット大航海】
コロンブス大航海の時の写真見てください。変わってないでしょ?
33年前なんです。みんなこのぐらいの年だった。
僕はヨットの会社に勤めていて、そこがバブルで儲かりすぎていたので、ヨットを使って社会貢献して企業イメージを上げようっていうプロジェクトがあって。僕はそこに任命されたんです。ヨットには大人数は載せられない。だったら、学校行ってない子たちを対象にしようとなった。
「欧米でやっているようなヨットを使って大航海をしよう」
顧問についた有名な精神科医の河合洋先生がラジオで言った途端に、500件ぐらい問い合わせが来ました。
実際、子どもたちと一緒に横浜から太平洋を超えてミクロネシア連邦のポナペへ3ヶ月ヨットに乗って過ごすだけで、その子らがみるみる変わって、みんな元気になっていった。
海の男みたいに真っ黒になって帰ってきた子らを見て、お母さんたちが涙流しながら港で待ってるんですよ。
僕は「そんなに喜んでくれるんやったら、これをやろう!」と思った。ところが会社はこの事業はお金がかかりすぎて、やらないとなった。じゃあもう、横浜で独立してしまおう、となったのが始まりです。
そこから25~30回ぐらいコロンブス大航海をやりました。ミクロネシアの他に、ニュージーランド、カナダにも、オーストラリアにも行きました。
マッキーが行った当時は、日本の私立高校や大学に行くより、ニュージーランドの方が安かったんです。だから日本でやらず、生徒を集めてニュージーランドに行ったんです。
マッキーは不登校がチャンスだと言ったけど、僕からしたら引っかかったんですね。
「お前学校行ってないんだったら、俺と一緒にヨット航海行けるよ」
「金森さんは学校行ってる奴は相手にしないよ」
「学校行ってない子だけ特別に面白いこといっぱいしよう」って言って、わざと学校行ってる子が参加できないようなプログラムばっかり作るわけ。
それをどうしても一緒にやりたいって言ったら、学校休んで来いっていうぐらいのことをやってて。それをチャンスだと思ってた。
【不登校とひきこもりの長期化】
彼が不登校で来た時、不登校という状態はまだ社会的に認知されいてない時代でした。不登校っていうのはなんだかよくわからない状態で、クラスに1人もいないような状況だったんです。
彼の時代はお父さんもお母さんも「何が起こったんだ、自分の子どもに?」とひっくり返ったんです。
35年前、当時のマスコミは不登校って「学校行きたくない?俺だって会社行きたくない」、「不登校って甘やかしに過ぎない」ってみんな言ってました。僕も仕事でやらなきゃとなるまで、興味も持っていなかった。
当時と今では明らかに違いますね?みなさんは、自分の子どもの不登校に驚いてはいないでしょう?
今、「不登校は誰にでも起こる、不登校は皆に起こりうる」という共通認識があると思います。僕はずっと前、35年前に不登校の子どもたちと一緒に過ごして、見えて来たこととして、そのことを言い出した最初の方の人間なんです。
不登校は特別ではない、あるシチュエーションになったら皆に起こることだから原因探しはやめよう。問題は今、その子どもがつらいのか、親がつらいのか?
どっちなのか、両方なのか?という話なんです。
中でも親だけがつらいだけで、子どもが全然つらくないケースは恐るべき話で、長期化して30年が経ってしまうこともある。
不登校の子どもたちに対して、いつからか社会や学校の先生たちがみんな「いいよいいよ」って言い出したんです。「待ちましょう」「信じましょう」って言われたことあるでしょ?
それ自体は間違いじゃないですよ。でもその結果何が起こったかというと、信じられないぐらいに長期化しているってことです。
いちばん注意しなければならないのは、ひきこもりの長期化です。
あなたたちは自分たちの子どものことが、1年以内に解決すると思っていますか?
今から3年以内に元気になると思っていますか?
僕はもう若者自立支援を35年やっています。その経験からお話します。
3年、5年、10年待つ間に、子どもだけでなく、あなたも間違いなく歳を取ります。
元気だった自分が、だんだん元気がなくなっていくんです。力を失い、うんざりして嫌になって、どうでもよくなり、何もしたくなくなります。ただ待っていても、解決はしないのです。
今日この場で話を聞いている皆さん。
あなたがたは行動を起こせていないからこそ、ここに来られているんでしょう?
行動しなければ、間違いなくあと3年、5年、10年続きます。
当時14歳のマッキーのお父さんお母さんたちは必死でした。
マッキーの大航海の舞台裏に、お父さんお母さんの親としての責任と覚悟があったからこそ実現したんです。
【K2の支援~はなれてつながる~】
K2の支援は35年前から一線を画していたことがあります。それは何か?
通いがきっかけであったとしても、基本的には親と子が完全に離れるということを大事にしています。通いの場そのものには、僕は意味を感じていないんです。なぜか?
通いで僕らとミュージカルやったり、毎日面白いことやってみても、家に帰ったらまたお母さんお父さんと一緒の環境になって、それこそお父さんに顔を見れば、「お前は何遊んでるんだ」と言われてしまうことになるからです。
「ふるさとは遠きにありて思ふもの」って言うでしょう?
愛してるもの、大切なものとは、距離があるんですよ。
ふるさとに住んでいる人は、みんなふるさとのことを嫌と言います。でも、ふるさとから離れて東京で暮らしてる人は、みんな「ふるさとはいい」って言うじゃないですか。
それはなぜかというと、離れてるからです。
もちろん、一緒に長いこと住んでいても、夫婦で住んでいても、きっちり距離を取れる人たちはいます。その人たちは大丈夫なんです、僕もかつて若い頃にそういう時期がありました。それができる人はそれでいいんです。できない人はもう物理的に離れるしかないんです。もういい加減、我が子と離れることです。
不登校になる子どもたちのいちばん難しいところは、昔から変わっていないんです。
それは、学校でも職場でも、距離感というものが分かっていないんです。
「学校に行けば友達がいるはず」
「学校に行けば先生は自分と一緒になんかやってくれる」
「家ではお父さんはこういう役割」
「お母さんはこうすべきだ」
そう信じている。けれど、現実は全然思い通りに行かない。
学校に行けている子どもたちは違います。
「別に先生なんて、支援者だって、仕事で給料取ってやってるんでしょ?」ぐらいに思っている。こういう子はやれるんです。この理解が正しいものだとは言えないけれど、こういう風に思える子はきちんと距離が取れるんです。
ところが生きづらい子たちは、
「なんでスタッフなのに」
「なんで先生なのに」
「友達だったらこういうことするものでしょ?」
「学校だったら、会社ってこうでしょ?」
「生きるってこういうことでしょ?」
って思ってるわけです。それを家族に向ける。
「親なんだから当然」「親だったらこうしてくれるでしょ?」
これが一番あかんのです。
日本の殺人事件の5割近くは家族間で起きています。警察白書の統計にもあります。
殺人は家族の問題です。最近起こった事件も、自分の子が親を殺し、親が子を殺し、兄弟同士で殺しあう。ニュースにならない事件が増えています。
それはなぜなのか?
家族がいつまでも一緒にいるからです。社会制度として、もっと離れて暮らせるようになればいいんです。そうしておいて、時々自分がいちばん調子の良い時だけ逢ったらいいんです。それだけのことなのに。日本の社会はそういうことを認めないですね。
いいじゃないですか、離れれば。離れて大事にすればいいんです。
一緒にいたら絶対に大事にはできないんです。
好きだし大事ですよ、自分の子どもは。だけどもよく考えてください。
「でも親子だから」「自分がもうちょっとなんとかすれば」ってみなさん言われるんです。
この先は一緒にいればいるほど、子どものことを憎むようになります。その果てに何があるのかはお話した通りです。
僕がこのことを始めた35年前、元々は精神科医の先生を紹介されたんです。その先生が言ったことは、
「金森くんのやっているヨット航海とかミュージカルに比べたら、精神科の治療なんて全然効果ないよ。彼らに必要なことに現実に応えようとしたのは、金森くんだけだよ」
子どもたちに必要だったこと、それは、役割・相談・大切です。
自分にはちゃんと役割があると思えること。子どもたちは自分はいてもいなくていいと思ってるんです。
そして相談。彼らには仲間が、信頼できる大人がいないんです。
そして一番大切だけど一番叶っていないことは、大切にされていると感じれらないことです。子どもに大切だと伝えるためにはどうしたらいいか?
離れるしかないんです。子どもは嫌だって言うかもしれませんが、子どもが家にいれば、親といつも喧嘩し葛藤を抱えることになります。その生活は楽しいですか?
そんなことを続けていたら、本当におかしくなって手遅れになって、もう本当にできなくなってしまいます。悲惨なことになってしまいます。
子どもと離れることも、すぐにはできません。
ここにいる皆さんにははっきり言いますが、いくらカウンセリングショッピングしても、行動できなければ意味がありません。行動とは、あなたたちが自分の子どもとの距離をちゃんと物理的に取る。そのことに尽きます。離れること以外にないんです。
さらにこれは僕の経験だけど、現実的な距離が遠ければ遠いほど元気になります。
K2は拠点が多くあります。ニュージーランド、オーストラリア、韓国、石巻、横浜に共同生活寮があります。
ニュージーランドは日本から8,000km離れています。石巻や韓国で何キロですか?
横浜に住んでいる子もいっぱいいます。
これは事実です。子どもと物理的距離が離れている親ほど、みなさん元気です。
嘘だと思ったら実際に来て、出会ってみてください。
家族の会を毎月やっています。家族会に来られると、いろんなことがわかります。
ただし、8,000~9,000km離れる時に、今まで以上にものすごく大事にしなければならないことがあります。それは、子どものことを本当に心から大事に思うことです。
一緒に住んでいたらいつでも関係は修復できる。でも、離れるということは、本当に問われることになります。
僕は海外に子どもを送る時に、親御さんに「今まで以上に子どものことを大切だとちゃんと思って、そして言葉で「大切だよ」って言ってやってください」と、いつもこのことを伝えます。それを言わないで「あーもうやっと家から出て行った」とか言っていたら、子どもはニュージーランドやオーストラリアで元気にはなりません。
ヨット航海しても、ミュージカルやっても不安なんです。常に「お母さんお父さんが僕のことをもう見捨てるんじゃないか」と思ってしまう。
一緒に暮らしていたら、子どもはひどいこと言うでしょ?
あなたがたはみんな、「お母さん助けて」と依存されながら、子どもにひどいこと言われていませんか?
「ひねくれ依存」って言うんですよ。小さい子どもの頃を思い出して下さい。子どもは 「おかあさんなんか嫌い!!」って言っても、親から離れていかないでしょ?ひどいこと言いながらも、子どもは抱きついてきたでしょ?あなた方には、まさにそれが今も続いているわけなんです。こんな嫌なことはないでしょう?
30数年前、発達障害は世の中にはよく知られていなかった。母原病って言われていたんです。母親の育て方が悪い、母親がもっとちゃんとしていたらなんとかなる。
「父親はこんなに一生懸命働いてるのに、お前は子どものことなんでできへんのか」
「母親がしっかりしてさえすれば、子どもはちゃんと育つ」
「母親が悪い」毒親という言葉もありますね。もう、母親が、母親がって言われていた。
例えばお母さんが構いすぎだから。お母さんが知らん顔したから。
原因探しをしてはいけないんです。あの当時はひどかったですよ。
「共働きだからダメなんだ」「あなたが専業主婦でないから、こういう子どもができるんだ」「お母さんもっと余裕を持って」
今だったら笑い話ですね、今働いていない人なんていないじゃないですか。ほぼ共働きになっている。
その後発達障害が知られることによって、当時原因にされていた母親たちは助かったんです。発達障害者は増えています。今は当時の10倍以上はいるでしょう。世間はみんなその時代の空気に合わせて、言いたいこと言ってるだけなんですよ。
これまでお子さんのために沢山の時間を費やしてきたと思います。
5年問題行動を起こしている子と、10年問題行動起こしてる子とどちらがいいか。時間は短いにこしたことがいいに決まっています。でも、これを皆さん先延ばしするんですよ。
K2にはまだ本人がつながっていない親が、いっぱい来ています。
本人がつながっていてもなくても、家族がつながっていれば、その子の感情の変わる瞬間、まさにそれに乗ってK2が有効に動けるからです。
親の考える自分のタイミングでなく、子ども自身が動きたいと思うその時、その瞬間が来た時に、タイミングを逃さず動けます。
タイミングが来た時に、これからどこに相談しようかと、つながる先を探していては間に合わないんです。逃したら終わりなんです。「もういいや」と諦めることになってしまう。
自分の都合で子どもに何かさせようとしても、事は動かせません。
人間は喉が渇いてる時に水を出されたら嬉しい。
お腹が空いてる時にお肉やご飯が出たら嬉しい。
遊びたい時に一緒に遊んでくれる友達がいたら嬉しい。
ゆっくり寝たい時寝られたら嬉しい。
親御さんは「私たち親は子どもと遊んだ、相談にも乗ってあげた」とよく言います。
でもその子に聞くと、本当に子どもが望んだタイミングで、望んだことを親ができたと思っていても、子どもはそう受け止めてはいないことが多々あります。
親に愛情がいっぱいあっても、子どもがそれを受け取らなかったら意味がないんです。
子どもはどのタイミングで動き出すかわからない。だからまず親御さんがつながりをつけておくことが大事なんです。
あなたが本当に子どものことをなんとかしたいなら、あなただけがつながればいい。
親がつながっていないのに、子どもをつなぐことはできないですから。
お子さんのことでどうしたらいいか、本当に解決したくて悩んで、ここに話を聞きに来ている方は、家族の会に入ってください。
親が家族会に毎回来て、元気になってきたら、それだけでも子どもは変わります。
あなたたちの生き方そのものが変わっていけば、あなたたちに変化があれば、子どもは変わりますから。
カウンセラーショッピングはもう今日でやめましょう。今日もいい話聞けたなって終わらないで、つながって帰ってください。
家族の会を毎月やっていますから、来て見てください。
K2につながって10年後、20年後の親御さんたちがいます。
離れて暮らすと、親も子もどんなに元気になるのか。実際にそうしてきた親御さんと会いに来てください。